ジョセフ・ヒース「反自由主義的リベラリズム」(2024年7月30日)

概要

  • 現在の自由主義諸国では、リベラルの価値観の妥当性が認められ道徳の基盤になっている
  • 哲学的な意味でのリベラルとは、
    • 国家権力は制限されるべき(それゆえ、多数派が少数派に自分たちの意向を押し付ける権力は制限されるべき)
    • (他人はどのように行動すべきかという)個人の私的な道徳的見解と、(理に適った形で他人に強制できるのはどのような行動かという)個人の政治的見解を区別する
    • あなたは、誰しもと同じように、自身の生き方が正しく他人は間違っていると考えている。だが同時に他人もまた、自分の生き方が正しくあなたの生き方は間違っていると考えている。あなたはこのことを認識して、自分の生き方を他人に押し付けようとするのを控えることに合意し、それに応じて他人も、自分の生き方をあなたに押し付けるのを控えることに合意する。
    • それゆえ国家による強制力の使用は、誰もが許容できないと合意できるような行動をとった場合に限定される。
  • 現在の世論の分断や過激化は、最後の「国家による強制力の使用は、誰もが許容できないと合意できるような行動をとった場合に限定される」が悪用された結果
    • 単に自分が気に食わないと思うことを「誰もが許容できないと合意できるような行動」に仕立て上げて異なる意見を弾圧することに使っている
    • 左派急進派はもとより、右派急進派もこのリベラリズムのバグを利用している。利用しているというよりは、むしろ、彼らにもリベラル的な価値観が染みついており、その行動原理にのっとってマジョリティーに反抗している。そして、それゆえマジョリティーは一概にその過激な主張を無視することができない。
  • 急進派の主張の方法 (リベラルのバグの突き方)
    • 危害の拡張的な定義
      • 自分が気に食わないと思うことを、社会的影響のあることに仕立て上げる
    • 権利の拡張的な定義
      • 個人の権利を拡大解釈して、気に食わない奴らがそれを侵害していると主張する
    • 自発性の限定的な定義
      • 自分と異なる生き方をしている人々に対して、自分たちの考える生き方を押し付けようとするときに、主張の根拠のロンダリングに使う。
      • 彼ら/彼女らは、抑圧され自発性が侵害されているので、拒否できないでいるのだ。それゆえ、彼ら/彼女らの意向は無視してもよい